本研究の目的は、日本を中心にした国際経済関係の地域化の程度を検討することにある。とくに貿易・投資と通貨・金融について検討した。 この課題に沿って、いくつかの具体的な実証分析を行い、計6本の論文にまとめあげた。まず第1に、日本とその貿易相手国との間の輸出入貿易と直接投資の相互連関を「万有引力モデル」を用いて分析する論文を3本書いた。これらの論文では、日本の貿易フローと直接投資フローの間に有意かつプラスの相互連関が存在すること、この相関は貿易・投資の総量についてだけでなくいくつかの産業別の貿易・投資フローの間にも認められること、日本の海外直接投資と被投資国の対米輸出との間に有意かつプラスの相関が存在することが計量的に確認された。第2に、円の国際化と東アジアにおえる通貨地域の形成、基軸通貨の選択という通貨面を分析した論文を2本書いた。これらの論文では、日本の輸出入の円建て比率、ドル建て比率のパターンが貿易相手地域、貿易品目、およびそれらの交叉項の影響を受けて変動すること、東アジアにおいて日本円が基軸通貨として機能するようになる可能性はさしあたり小さいが、日本と東アジア各国との間の貿易・投資のリンケージが深まれば各国の為替政策における円の重要性は高まるであろうことが論じられた。第3に、東アジア域内のマクロ経済的な相互依存に関する論文を1本書いた。この論文では、いくつかの東アジア諸国のマクロ経済ショックが日本やアメリカの影響を受けていること、シンガポールやASEANを中心とする諸国間のマクロ経済ショックの国際相関度が高いことなどが確認された。 以上の実証分析から、日本を中心とした国際貿易、直接投資、通貨・金融、さらにはマクロ経済が地域化しつつある現状を示すことができた。
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