本研究は、公共事業における談合および議員・地方首長によるその落札への介入が、わが国行・財政のあり方に関する最も関心を集める問題の1つとなっていることを顧慮し、そのような問題が生じる原因と、公共事業の入札において効率的な入札結果が保証される仕組み・制度を検討しようとするものである。特に、公共事業では談合による受注が常態となっているとさえ言われるように問題が深刻であること、他方入札制度のあり方について理論的な考慮が十分払われていないことを考え、より効率的に入札の制度のあり方を基礎的かつ理論的な観点から検討しようとしている。 本研究では、第1に、入札制度のあり方が情報、入札(auctionまたはbidding)、依頼人-代理人(principal-agent)理論等の観点からどのように捉えられ、効率的な結果が得られる制度がどのようであるか、第2に、公共事業入札に関して実際に指摘される種々の問題を考えると、どのような入札制度が望ましいか、について問題を検討している。 本研究は来年度も継続研究となる予定であり、そこで本年度は、これらの理論のこれまでの成果を展望し、また、わが国で現実に問題となるような事例に対処し得る入札制度のあり方を理論の観点から考察するために、さらにどのような問題が解明されなければならないかを考察した。これらの理論分析結果は、特に類似の事業が繰り返し入札に付される状況では、行政が談合に対抗するのが容易でないことを示唆するものとなっている。 さらに、最近発注者である行政側が談合に関与したという問題も指摘され、問題の深刻性・解決の困難性を強く示唆しているが、来年度は談合事例の詳細な検討を行い、さらに理論的な観点での検討・解明を進める予定である。
|