本年度は研究計画に従い、アンケート調査中心に研究を行った。計画では、自治体の首長に聞き取り調査を行う予定であったが、費用などの点を考慮してアンケート調査に切り替えた。これは、層別ランダムサンプリングにより選ばれた917の全国の自治体の首長を対象に、平成7年6月に行われた。回収率は、都道府県が77%、市が72%、町村が59%と高く、地方分権に対する関心の高さがうかがわれた。 かいつまんで分析結果を述べると次のようになる。今後の地方分権の進展に関しては、都道府県は国から権限・財源の委譲が確実に進むと考えているのに対し、市町村は部分的な手直し程度に終わると考えており、市町村の地方分権に対する厳しい見方が目立った。この際、地方分権を阻害している要因としては、都道府県、市町村ともに第1に中央省庁の既得権を守ろうとする姿勢を指摘している。地方分権の効果としては、都道府県、市町村とも最初に、地域の実情にあった行政サービスの提供を、次に東京一極集中の是正を挙げている。また、地方分権を実行するためには、人的資源の確保・財源保障の必要性を強調する自治体が多かった。 理論的分析においては、Myers等の研究では地方財政システムの不必要性が指摘されいたが、地域公共財が地域間でスピルオーバーする一般的なケースでは地方財政システムの存在を指摘するHochmanなどの研究を紹介する。 最後に、これらの研究、先に述べたアンケート調査結果および地方税に関する一連の議論などを参考にしながら、考えられる日本の地方財政システムのあり方をまとめる。
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