研究概要 |
当該研究の研究目的は、1)婚姻儀礼時の共同的な贈答行動に関する、家族関係の影響を明らかにすること、2)他者との消費財の交換形態をとる婚姻儀礼を調査対象とすることで、消費行動の社会的側面に焦点をあてること、3)互酬関係と市場経済との関連を解明すること、の3点にあった。 今年度は、平成6年度に行った質問紙調査のデータ解析を中心に研究を行い、14名への詳細面接調査も併せて行った。質問紙調査は、横浜市在住の30代、50代女性、各々1500票ずつを、二段階無作為抽出法により抽出、郵送により実施した。回収されたデータをもとに、婚姻儀礼と贈答儀礼に関する消費行動の分析を行った。文献研究により贈答儀礼を含めた婚姻儀礼に関する概念を変数化、その世代間の規範意義の差を平均値比較により検定した。さらに30代標本を用いて、贈答儀礼のうち、互酬規範意義が披露宴の高額現象に影響を与えるという仮説を、披露宴支出額を従属変数、互酬規範変数群を説明変数候補とする重回帰分析により検証した。 発見事項は,1)互酬性という社会規範が婚礼市場を支える一つの行動原理となっている反面、「自分らしさへのこだわり」という、儀礼性や互酬の論理とは独立した志向が披露宴の高額支出傾向にマイナスの影響を及ぼしていること、2)披露宴演出に関して、当事者よりも親世代の肯定的な意義が強く、披露宴一般への満足度も高いこと、3)親世代は、儀礼への手順や、互酬性により社会関係を強化する面を比較的重視していること、4)結婚当事者達の披露宴高額支出に影響を与えているのは、もちまわり経済的な一般化された互酬性よりも、均衡化された互酬性についての意義であること、等であった。
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