今年度の研究は、地場産業と地域経済に関する基本的な文献収集(市販の研究書と調査報告書の双方を含む)から開始した。その結果明らかになった第一の点は、活性化した地域産業圏では、多様な企業・組織群のネットワーク・分業関係が存在し、地域資源の完全活用が図られているという点である。伝統的な地場産業における工程間・製品間分業構造や近年のテーマパーク開発における他方自治体、大手企業、地域企業の複合体の中にその典雅現れている。これに対して、1990年代前半の好況時に地方に進出した大企業の工場周辺や一部の観光産業振興地域では、大手企業と地元企業との間や地方自治体と民間企業との間での人的・情報的な交流が欠如しており、地域経済の発展を阻害している。 第二に明らかにされた点は、地域社会の活性化のためには地域産業の経済的な成果の向上に加えて、さまざまな環境要因への考慮が不可欠という点である。地域の環境保全や生態的資源の維持に努めないところでは、結局地域社会からの支持(正当性)が得られず、地域の活性化は実現しない。 以上の文献研究の成果を踏まえて、長崎県地方における地域複合企業体(テーマパーク事業)の実地調査を行った。地方自治体と開発主体企業から資料収集と聞き取り調査を行い、事業施設の訪問調査を実施した。それによって、地域資源(人的資源、資金、生態的資源、情報的資源)の利用状況と成果を評価・分析するデータが得られた。 ただし、実地調査時期が年度末(1995年3月)であったため、データ分析と本研究の最終成果の発表は次年度になる予定である。
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