日本国内には、一定地域において地元資本をベースとする中心企業が集積し、地場産業を形成しているケースが多くみられる。こうした企業群は、それぞれ他の企業との間で密接な分業構造を構築しており、こうした集積効果により競争力を発揮していた。これらの中小企業は保有する経営資源が必ずしも十分ではないため、地域内の他の企業や組織などから資源を補完する必要性がそれだけ高かったのである。今日、国際化・情報化・高齢化などの変動要因に直面し、地域に密着した中小企業は既存の資源補完ネットワークの見直しを迫られている。 一つは、資源を求める範囲の拡大である。従来は、経済的活動に関わる人的・物的・資金的・情報的資源のみが企業活動に必要なものと考えられ、他の社会的・自然環境的資源は単に事業活動の制約要因と考えられていた。しかし、これからは地域社会からの支持の取り付けや自然生態的環境に配慮した活動が求められている。 第二は、資源補完ネットワークの組み替えの問題である。日本経済の国際化の進展などの変動要因に直面した中小企業は、事業構造や保有技術の転換を図る必要に迫られている。しかし、既存の事業を前提にした企業間分業構造がどこまでこうした変革を支えられるのかは深刻な問題となっている。 今後の研究課題としては、以上のような経営学的視点に加えて社会学・心理学・環境マネジメントなどの学問領域の視点を組み合わせることで、地域社会と企業との関係の理解をより充実させることがあげられる。
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