平成6年度にあっては経営倫理に関する内外の論者のこれまでの研究成果を文献研究ならびに研究者との交流を通じて確認し、整理した。その結果、経営倫理研究が社会的責任研究の今日的展開であり、社会的責任論の拡充の形で経営学的意義をもつことを明らかにするとともに、上記の研究成果の一端を2つの論文、「経営倫理論の展開と課題」(経済科学、第42巻第1号)および「現代の経営原理についての一考察-共同および共生を中心に-」(国際開発研究フォーラム、第2巻)に発表した。 前者の論文においては、経営倫理研究の展開に触れたあと、まず、今日における経営倫理研究の特質をみた。ついで、経営学としての経営倫理論の課題に関して論じた。最後に、経営倫理研究の展開を含めて、社会的責任論の拡充傾向が経営学の再構築を要請していることを指摘した。後者の論文では、現代の企業は企業と社会の相互作用関係を適切に認識し社会へのその適合を可能ならしめるところの、新たな経営原理を必要とすること、ならびに、かかる原理の把握への手掛りを提供するようにみえる概念のうちには共同および共生なる概念が含まれることを明らかにした。とりわけ、経営倫理への関心の諸方面での高まりが共同の概念の企業経営に対する意義を増大せしめていることを指摘した。 平成7年度では経営倫理の企業経営への内在化に、つまり経営政策過程への経営倫理の織り込みに係わる今日的課題について検討するとともに、倫理指向の経営政策の体系的把握を行う。そして、平成7年度および前年度の研究成果を文献研究および研究者との交流の中で更に検討し、その深化・拡充に努めるとともに、その結果をまとめるようにする。
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