研究概要 |
研究成果の概要は以下の通りである。 1,日本的生産システムの特質を生産のフレキシビリティと労働編成のフレキシビリティの2つの側面から解明することの重要性を今回の工場調査とそれをふまえた理論的整理のなかであきらかにできた。 2,上記の労働編成のフレキシビリティのなかで、本研究の課題である多能工化の施策が基礎的な要点をなすものであることを、本研究の成果として確認できる。 3,多能工化という形の労働編成は日本的生産システムの特徴を象徴的にしめすものであるが、これは現代の労働における熟練形成への一般的契機をなすものではあるが、これを日本の自動車工場という量産型加工組立工場の熟練形成の一般的形態であると評価するわけにはいかない。短いタクト・タイムのなかで、いくつもの作業をこなせるようになっても、そのこと自体は熟練形成となるものではないことを、今回の研究で実態的に解明できた。 4.この多能工化は欧米の細分化、単純化されたテイラーリズム的労働編成の工場作業と比較すれば、作業に変化を与え、作業範囲を拡大し、労働者に改善の形で参加を求めることが労働者に作業モラールを高めることになっている。このことは最近の欧米への日本的システムの移転についての工場調査のいくつかがしめしている。しかし、このことと、多能工化が熟練形成と結合しているかどうかは別のことである。 5,こんごの研究課題としては、こうした多能工化をはじめとした日本的労働編成が、今日「工場改革」として自己改革をよぎなくされてきているなかで、その改革の中心をなす作業の完結工程化の意義について理論的、実態的に解明することをあげておきたい。この課題はとくにボルボ・モデルとの比較検討を通じて整理したい。
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