本研究は、わが国企業のグローバル化により生じた経営管理機能、日本的経営、管理会計、原価管理の国際移転の際に生じる諸問題を、NIES諸国(韓国、香港、台湾、シンガポール)とASEAN諸国(タイ、マレーシア)に進出した日系企業857社へのアンケート調査を中心にその実態と課題を明らかにしたものである。本調査の回収率は23.6%であり、有効回答企業数はアジア全体で181社(NIES諸国100社、ASEAN諸国81社)である。 本プロジェクトで行った調査研究の内容をより具体的に説明すると、日本的経営(人事制度、生産方法、意思決定の方法など)及び研究開発、設計、JITなどの経営管理職能のローカル化の進行とその問題点を検討した。同時に日系企業のローカル化に対応して原価構造や原価管理の課題や方法がどのように変化しているのか、海外子会社の予算編成/統制プロセス、親企業と海外子会社との間での振替価格、業績評価、設備投資の経済性計算、資金調達、日本の親企業と海外子会社の間での意思決定権限の分担など管理会計の諸問題についてその実態と特質を明らかにしたことである。 研究成果は、研究発表に記したとおり、まもなく二つの論文に纏めて公表する予定である。これまでのヨーロッパ諸国及び米国への国際移転のケースと比較すると、そのアジア的な特徴が随所にみられ、またNIES諸国とASEAN諸国を比較してみると、その相違も明らかになってきている。その原因は、例えば進出年、進出目的などが地域により相違しているという外的要因だけでなく、企業による相違もみられ、それらの諸要因が日系企業の経営システムや管理会計/原価管理システムのあり方にも大きな影響を与えていることがある程度明明らかになった。
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