何が貸借対照表に計上されうるか、誰の貸借対照表に計上されうるか、従って、どのように資産と負債を定義して認識するかの問題について、まずは、ドイツの会計制度に軌範を求めて、さらに、日本およびアメリカの会計制度も比較して、貸借対照表計上能力のメカニズムを分析すること(本年度)、同時に、会計制度の国際化に備えた調和比の方向を模索すること(次年度)を意図している。 本年度は、貸借対照表計上能力の史的変遷について、まずは、会計制度の基底にある静態論、動態論を解明することから出発した。動態論の構造から導出される貸借対照表計上能力として「後給付」と「前給付」の今日的な意義まで問いながら、研究業績は、論文「動態論と貸借対照表能力」(I)、(II)および(III)としてまとめ、『西南学院大学商学論集』に公表している。また、貸借対照表計上能力画定メカニズムについては、すでに、対象問題、帰属問題は解明しているので、選択権問題、すなわち、1985年のドイツ商法に「貸借対照表に計上しなればならない」と規定される計上義部、「計上してはならない」と規定される計上禁止に加えて、「計上することができる」と規定される計上選択権、従って、貸借対照表に計上するかどうかの自由裁量が付与される経緯、これにいかに歯止めを掛けるかの問題点を1870年/1884年のドイツ株式法、1897年のドイツ商法、1931年/1937年のドイツ株式法、1965年のドイツ株式法、1985年のドイツ商法まで跡付けながら、研究業績は、論文「貸借対照表能力と選択権」、「貸借対照表能力の実相」としてまとめを完了して、『會計』、『西南学院大学商学論集』に掲載する予定である。
|