研究概要 |
本研究では2次形式の局所密度(以下、単に局所密度と略する)の間に成立する有効な漸化式を見いだした.またこれを見いだす際に用いた手法を応用しジーゲル-アイゼンシュタイン級数のフーリエ係数の精密な値にも大きな寄与を行った. まず、北岡良之氏によって定義された局所密度に付随する1変数べき級数の分母に関する結果の精密化を得た. 次に,3次のアイゼンシュタイン級数のフーリエ係数を完全に決定することができた.この方法をさらに一般化することにより,一般次数のアイゼンシュタイン級数のフーリエ係数を決定できる可能性がある. 3番目に,フーリエ係数に付随するあるべき級数を局所密度に付随するあるp-進積分で表し,その積分を研究した.この結果を用いて,伊吹山知義氏(大阪大学)との共同研究により,ジーゲルアイゼンシュタイン級数に付随するマ-スゼータ関数の具体的な表示を完全に決定した.現在この手法はレベルのあるジーゲルアイゼンシュタイン級数及びヒルベルト・ジーゲルアイゼンシュタイン級数等にも適用可能でそれらに付随するマ-スゼータ関数の具体的な表示が可能になると思われる. 最後に,ある次数の対称行列を表現する(合同関係のない通常の)局所密度をそれよりも次数の低い対称行列を表現する局所密度と関係づけた.これにより,我々は,局所密度に付随するある多変数べき級数の有理性およびその分母の精密な形を得ることに成功した. 当初計画してきた研究目標はほぼ達成された.さらに,2番目と3番目の研究成果にみるように、本研究年度内には達成されないと思われた事項が達成されたことは望外の喜びである.
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