研究概要 |
PをInt((P)∩Z^n={0}を満たすR^n内の整凸多面体とし,Aut_Z(P)={g∈GL(n,Z)|gP=P}とする。次の結果が得られた。 1.Aut_Z(P)がPの各次元の画集合に推移的に作用するならば,(R^nに適当な内積を入れることにより、)Pは正(n+1)面体、生2n面体、正2^n面体、正六角形または正二十四胞体のいずれかになる。 2.Aut_Z(P)の部分群Gが原点以外に固定点を持たないと仮定する。nが奇数ならばG={I_n}または{±I_n}である。n=2または4のときは包含関係に関して極大なものは,GL(n,Z)により共役なものを除いて、それぞれ二つまたは七つである。従って、このようなGのGL(n,Z)による共役類は有限個である。 3.X_PをPに対応するトーリック多様体とする。Aut_Z(P)の部分群Gが鏡映元を持たなければ,X_P/Gは標準特異点しか持たず、また反標準因子は豊富である。 これらの結果は当初の研究目的として得られたものであるが、その研究過程において、以下のような結果を得られた。 4.σをR^n内の強凸有理多面錐とするとき,X_σ:=SpecC[σ∩Z^n]をトーリック特異点と呼ぶ。Gを{g∈GL(n,Z)|gσ=σ}の部分群とするとき、X_σ/Gが非特異となるための必要十分条件はGが鏡映群であり、かつGの基本領域とσとの共通部分が非特異錐となることである。また、この条件を満たす組(σ,G)を完全に決定することができた。商写像X_σ→X_σ/Gの分岐点集合の定義式を求めるアルゴリズムもわかった。この結果をGがAut(X_σ)の部分群の場合に拡張すること、即ち、非特異点のガロア被覆となるトーリック特異点をすべて決定することが今後の課題である。
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