研究概要 |
種数1の代数曲線、すなわち楕円曲線の整数点を具体的に求めた例はBakerの一般的な評価によるものは知られておらず、いくつかの偶発的にわかるものしかなかった。研究代表者の求めた代数群上の対数一次形式の評価の改良をLangの議論を応用して整数点の絶対値の上からの評価式に直したものはS.Davidの数値計算によりStroekerをTzanakisが計算機にかけて新しい二つの整数点の例を求めることを可能とした鍵の道具となった(R.J.Stroeker & N.Tzanakis,“Soloing elliptic diophantine equations by estimating linear forms in elliptic logarithms"Acta Arithmetica LXVII.2(1994))これにおける研究代表者の評価の改良のためのアイデアは研究代表者の名を冠してS.Davidの論文に紹介してある(S.David,“Minorations de formes lineaires de logarithmes elliptigues",Memoire,Bulltin de SMF,to appear).この対数一次形式の評価というものはまだ最良近似に到達していないが、さらに良くすることのできる場合を当該年度に発見した。それは楕円曲称が代数体上定義されているとき、加法群(複素数全体)による楕円曲線の非自門拡大である代数群を考えたときに、その周期、くわしくは指数写像の0の逆像の座標の代数的数による対数一次形式の絶対値の下からの評価が今までのものより良くなるということである。ここでは一般の代数群の代数点の指数字像による逆像の対数一次形式ではなく、特別な場合であるため、さらにこの結果を一般化しうるかどうか考える必要がある。また、Bakerのタイプの超越数論の方法によるディオファントス近似ばかりでなく、Roth-Schmidfのタイプの非有理数近似型のディオファントス近似により、よい整数点の個数の評価を得ることも考察中である。後者はS整数に拡張されうるが、前者はS整数への拡張がまだされておらず、それをおこなうためにはP進logの対数一次形式の下からの評価がまず得られなければならない。2個のlogの一次形式については定数項まで計算されているが、一般個でなければ楕円曲線のS整数への応用はきかないので、n個のlogのP進版の結果を求めることが今後の課題である。
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