Oshamineが有向同境群に対して定義した「楕円種数」と類似した性質を持つ「無向楕円種数」を無向同境群の中に定義し、その性質を研究した。計算のために道具として、微分法の2進数体上の類似物である「2進微分」作用素を定義して、「2進」の意味でのテイラー展開などを用いて、無向楕円種数が満たすべき、巾級数としての係数間の関係を決定する事が出来た。その計算は極めて複雑な初等的計算を駆使したが、シンポジウムでの討論により、ファンデルモンド型の行列式を用いて、ある程度簡略化できる事が後に分かった。 上記の無向楕円種数の性質を用いた計算により、実射影空間束の作るイデアルの生成元素が満たす関係式をいくつか発見した。さらに、無向楕円種数の概念を拡張して「無向擬楕円種数」の概念を定義して計算した結果、さらにいくつかの関係式を発見する事ができた。これらの結果は、「Osaka Journal of Mothewatics」誌に論文として発表した。なお、この論文の準備段階で米国のStong教授から、別の方法(古典的な特性類の計算)により、上記イデアルの関係式をすべて決定できる事を教えられた。また、「無向同変楕円種数」に関する内海政幸氏の論文が「Saitama Journal of Mathewatics」誌に発表された。
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