研究概要 |
この数年,数理物理学における手法が,多様体の幾何学の研究に大きなインパクトを与え続けている.本研究の主要テーマは,標語的には,場の理論などにあらわれる無限次元の対象から,多様体の位相形のみによる不変量を抽出することである. 2次元共形場理論をリーマン面のモジュライ空間上のベクトル束とその持続の理論として,幾何学的に定式化した.これは,リーマン面のモジュライ空間上の可積分系の豊富な例を与えており,我々は,この微分方程式系の解の構造を,超幾何関数の一般化という視点から研究した.さらに,この接続のホロノミーとしてあらわれる写像類群の表現を量子群を用いて記述した. このような,2次元の場の理論における成果を3次元多様体の研究に応用した.Chern-Simonsゲージ理論に基づいたWittenによる3次元多様体の不変量の先駆的な構成の後,組み合せ的,あるいは幾何的な観点から幾つかの仕事がなされたが,我々は,3次元多様体のHeegaard分解と上に述べた共形場理論にあらわれるリーマン面の写像類群の表現を用いて,Wittenの不変量の具体的な記述を与えた.また、Chern-Simons摂動理論と積分幾何学,結び目のVassiliev不変量,さらにこれらのリーマン面のモジュライ空間の幾何学との関連などについて、新しい知見を得ることができた.
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