研究概要 |
伊藤敏和は正則ベクトル場が球面と横断的に交わる状況から接する状況に変化するところでの幾何学的構造を考察した。一般的な場合はThom座標を構成することにより変化する現象が記述できた。次に一般的でない場合にホロノミーが非周期的になる現象を示した。一方、ザイフェルト予想に対する自分が与えた証明とは異なる別証を与え,さらにそれをn≧3の場合にも拡張することに成功した。 松本和一郎は場は均質だが時間と共に変化する偏微分方程式の系が低階に摂動に安定に解を持つ為の条件を研究した。この方程式系の主要部は空間変数に関してフーリエ交換でき,低階も含めて擬微分作用素のシンボルと見れる。摂動に安定に解を持つ為にはこのシンボルが双対変数を固定するごとにフックス系に変換されねばならないことを示し,更に空間次元が1ならば,この条件は十分条件であることもわかった。 四ツ谷晶二は.天体物理学に現れるエムデン・ファウラ-方程式や松隈方程式,微分幾何に現れる共形スカラー曲率方程式を典型例とする半線形楕円型方程式に関して,正値球対称解の全体構造の分類定理と有限個の零点を持つ球対称解の存在定理を得た。さらに半線形放物型方程式の解の漸近挙動の分類定理を得た。いずれも,微分方程式から定まるベクトル場の大域的な性質を幾何学的,解析的に検討することにより証明を行った。 岡宏枝はベクトル場の退化特異点とホモクリニック軌道からのカオス的アトラクターの分岐について研究した。平衡点における線形化行列が3重の零固有値をもつような余次元7のある退化特異性の開折に幾何学的ローレンツアトラクターが存在することを示した。一方,余次元2のホモクリニック軌道からの幾何的ローレンツアトラクターの出現に関して,今までに知られていないタイプの分岐のメカニズムを見出した。
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