微分方程式論に関する研究課題に対しては、数式処理を活用する研究計画を立案し、微分方程式の解の零点に関する研究を実行した。その結果、数式処理のアルゴリズムが可能な形での微分方程式の解の零点に関する比較定理とでも呼ぶべき定理を証明することができ、その定理を数式処理の計算機プログラムに移行させることにより、微分方程式の零点の精度とその分布位置に関する成果を得る一つの手法が確立できたと考えられる。具体的には、無限遠点に不確定得異点をもつベッセル方程式にこの方法を適用し、無限遠点での零点の漸近的な分布情報と方程式のパラメーター(次数)と何番目の零点かという番号との間の様々な大小関係に関して従来知られていた以上の精密な結果が得られた。これらの研究成果に関しては、数式処理学会誌に発表した。 また、微分方程式を含む数学的手法としての数式処理及びシミュレーションを異分野における課題に適用することを試み、心理学あるいは社会学での共同研究として、いくつかの数理モデルを提唱し、そのモデルによる解決を学会論文として発表した。具体的には、杉万俊夫(京都大総合人間)との共同研究により、集団力学と呼ばれる実証的研究分野のデータをもとに微分方程式モデルを設定し、理論的解明を行ない、その成果を集団力学の機関誌に発表した。 また、本研究の分担者である佐藤靜・田中康彦による代数的側面に関する研究については本年度は研究成果には到ってはいないが、本年度において数式処理を含む計算機的手法に十分習熟することができたので、次年度以降において、その成果が十分に期待される
|