研究概要 |
本研究の成果は次の3つの分野にわたっている. [1]ジャンプを含む状態過程に付随するHamilton-Jacobi-Bellman方程式には,非局所的な作用素が含まれる.例えば,区分的に決定論的な確率過程(PD過程)を基礎とする衝撃ゲームの動的計画法からはジャンプに対応する確率測度に関する積分項が含まれる方程式が得られるし,仮似変分不等式からは未知関数に関する制限条件に関係した非線形項が現れる.このような非局所的作用素はこれまで個別に取り扱われてきたが,本研究では上記のような非局所作用素を例として含むような一般の非線形偏微分方程式に対して粘性解の存在,一意性が得られた. [2]細菌性粘菌は,自身が外界に放出する化学物質に反応してある方向に運動し,集合体を形成する.このような走化性をもつ細胞性粘菌の集合体形成をKeller-Segel方程式系の研究により数学的に説明する試みが活発に行われている.本研究では,いくつかの典型的な感度関数について,空間次元によって時間大域解が存在したり,有限時間で解のblow-upが起きたりすることが詳しく調べられた. [3]非線形Schrodinger方程式や非線形Klein-Gordon方程式の興味ある解は半線形楕円型方程式に帰着できる.このような方程式の解空間の構造は興味深い問題である.本研究では半線形楕円型方程式の球対称解について,与えられた個数の零点をもつnodal solutionの存在やそれらのノルム評価について詳しい結果が得られた.また,準線形楕円型方程式に対して与えられた漸近挙動をもつ球対称全域解の存在が証明された.
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