研究概要 |
バクテリアのコロニーや細胞性粘菌の集合体,昆虫の集合など多くの生物では化学物質の濃度勾配に感じて集まる走化性の現象がみられ,多様な空間パターンを形成する.また,バクテリア培養の条件として,培養濃度と寒天培地の堅さを変えることによっても多様な空間パターンを形成することが知られている.そこで,どのような仕組みによって,このような空間パターンが形成されるか明らかにするために,本研究では,連続体近似の反応拡散方程式による数理モデルの構築とその解析を行った.走化性については,前年度から引き続き,非線形の編微分方程式の解について空間パターンを形成しながら,その先端が空間的に広がっていくものの存在条件や伝播速度のパラメータ依存性を計算機シミュレーションによって求めることを試みた.また,培養条件の違いによる空間パターンの形成については,拡散係数が非線形となる反応拡散方程式でモデル化し,樹状枝分かれパターン(Dense-Branching Morphology)の再現に成功した.この方程式はバクテリアと養分の密度の2変数の編微分方程式で拡散係数がそれらの密度の積に比例する関数になっている.更に,計算機シミュレーションではバクテリア密度のランダムな揺らぎを取り入れた確率効果を持たした.これにより培養実験で見られる多様な樹状枝分かれパターンの再現が加納となり,連続体近似の反応拡散方程式だけでは良いモデルとならないことを示している.
|