研究概要 |
本研究の目的は,宇宙X線の偏向度を測定するための特殊ガス比例計数管の基礎開発である。偏向X線は,検出器ガスに光電効果により吸収されるとき,ガス原子より射出される一次電子の方向が偏向X線の電場ベクトルに依存する。この一次電子による電子雲の方向とサイズを検出することにによりX線の偏向度を測定できる。 我々は,この目的に沿って高精度のX線撮像が期待できる,全く新しい概念のガス比例計数管の開発研究を行っている。この検出器は,7mmのドリフト領域とキャピラリープレートから成るガス比例計数管である。キャピラリープレートとは,約1万本もの細いガラスパイプ(キャピラリー)を規則正しく二次元的に配列し,一様な厚さに一体化したガラスプレートである。使用したキャピラリーの直径と長さはそれぞれ100μmと800μmであり,プレート全体の直径は20mmであった。プレートの両表面にはインコネルが蒸着してあり,電極を形成している。 本研究の第一目的は,入射X線によてできた電子雲をこのような極めて細い管の中でガスと衝突させ電子増殖をおこさせそれを制御することであるが,この様な事は,今まで調べられておらず,全く未知の領域である。検出器の特性は,^<55>Fe5.9keVX線とAr95%+CH_45%の混合ガスを使って実験的に調べられた。ガス圧を760,570,380Torrと変化させた時の印加電圧に対するガス増幅度,エネルギー分解能の測定およびそのデータ解析をタウンゼンド第一電離係数と比較して行った。その結果,電子増殖がガス増幅によるものである事がわかり極めて細いキャピラリー管中で比例計数管の動作が行なわれていることが明らかとなった。 基礎特性として1.ガス増幅度は10^4まで得られた。2.エネルギー分解能はガス増幅度が約4000の時で^<55>Fe5.9keVX線に対して20.8%であった。基礎特性実験の結果より,細いキャピラリー管中において電子のガス増殖を起こさせ制御できることがわかった。これは,新しい位置検出型ガス比例計数管への応用の基本動作原理を示しており重要な研究成果である。 本研究の重要な点は,ガス増幅がおのおののキャピラリー内で起こり,そのため電子雲の大きさがキャピラリーの管径によって制限できる事である。この特徴を利用する事により,精密なX線撮像検出器の開発が期待できる。
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