研究概要 |
宇宙再結合直後の巨大ブラックホール形成に関し、宇宙背景輻射場と電離バリオンガス間のトムソン散乱による輻射摩擦型角運動量輸送の役割を定量的に解析した。トムソン散乱過程を正確に取り入れた一次元輻射輸送の計算により、輻射摩擦は、たとえ光子が拡散しても,光学的厚みに対し指教関教的に減少することが示された。これは、コンプトン冷却と輻射摩擦とは,光学的厚みに対する依存性が異なることを意味するものであり,宇宙初期の降着円盤の進化を考える際に大変重要となる。この結果は現在論文として執筆中である。 一方で、輻射摩擦が働いた場合のその後の降着円盤の進化を、乱流粘性モデルと結合させて解くことにより、観測可能な時期にどのような光度の天体となるかを調べた。もし輻射摩擦が働かなかったとすると、クェーサーの光度を説明するのには、通常の乱流粘性係数では不十分で,磁気粘性が必要であることがわかった。しかし、輻射摩擦が有効な場合には、乱流粘性だけでもクェーサー光度の説明が可能である。これらの結果は、宇宙初期降着円盤中の磁場の起源とも関係して興味深い。 その他本課題に関する研究として,中心天体の輻射摩擦による降着円盤の進化,光学的に厚い降着円盤の力学的安定性,残存ブラックホールの動レンズによる観測可能性についても解析を行った。
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