研究概要 |
平成7年3月18日にHII3号機で打ち上げられた衛星SFUに搭載されたわが国初の冷却赤外線衛星IRTSにより全天の7%の領域に対して、赤外線観測を行った。われわれのグループはこの中で、低分散の中間赤外分光器(MIRS)により中間赤外域のスペクトル観測を行い、黄道光放射・銀河系の拡散光成分について初めてスペクトルを得ることに成功した。本研究ではまずこのIRTS/MIRS観測の準備として、打ち上げ前からソフトウェアの開発を行い、観測後ただちに観測データの解析を進めた。このIRTS観測データの解析から、銀画面の周りに赤外域未同定バンドと呼ばれる6.2,7.7,8.6,11.3ミクロンに見られる炭化水素物質に特徴的なバンドが存在することを始めてスペクトルデータから明らかにした。これより、星間空間中に、このようなバンドを放射する物質が不偏的に存在することを示し、星間塵のモデルの観測的検証を行った。同時にCOBEのデータの解析を行い、このような放射が星間放射強度とほぼ比例することを明らかにし、紫外光により一時的に高温となるきわめて小さい星間塵によるものとする仮設を裏付ける結果を得た。 これと平行して、偏光を測定することにより、拡散光からこの成分を抽出することができることも示した。以上のように、拡散光中のバンドの存在を確認し、これまでの星間塵モデルの観測的検証・及物理的性質の研究の手段を確率するという本研究の目的を達成した。今後はIRTSのデータの詳細な解析を行い、さらに星間塵の性質を解明していく計画である。
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