本研究の主目的は、X線コロナ画像と同時に取得された光球面の磁場画像の解析により、天文学の基本問題のひとつである太陽コロナの加熱メカニズムを明らかにすることにある。このために、地上観測の最適地であるラパルマで取得された磁場画像と「ようこう」のX線画像の詳細比較を行なった。まず、米国ロッキード研究所の協力を得て、約2ヵ月分のラパルマ観測データと1次処理ソフトウエアを移植し、「ようこう」データと綿密なアライメント、大量のデータの中からシ-イングの良いデータの抽出を行なった。その結果1.1例についてX線で観測された点状小フレア(マイクロフレア)が光球面での異なる磁極の衝突で発生している兆候をつかんだ。これは、反対極性の磁気島の磁気リコネクションにより加熱が発生している証拠と考えられる。さらに、10数例のマイクロフレアの解析から、以下の事実が判明した(清水敏文博士論文)。2.マイクロフレアが微小の浮上磁場領域で発生する。これは、浮上磁場とコロナ中に存在していた磁場の磁気リコネクションにより加熱が発生しているためと考えられる。3.マイクロフレア発生領域の光球面のプラズマ速度が系統的に小さい。これから、光球面の磁気的活動とコロナのトランジエント加熱現象に相関があることが初めて明らかになった。しかし、ラパルマのデータをもってしてもシ-イングの良いデータが十分なく、光球面の磁気的活動とコロナのトランジエント現象の間の因果関係を一般的に求めるためさらに解析を続行する必要がある。
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