研究概要 |
本研究は楕円銀河とその周囲に分布する球状星団の星の種族の考察から楕円銀河の形成と進化を解明することを目的としている。最終年度に当たる本年は多角的な観点から楕円銀河の形成と進化を捉え、幾つかの特筆すべき成果が得られた。(1)まず、銀河のスペクトル進化を化学進化とともに追跡する種族合成モデルを完成させ、楕円銀河NGC3923とNGC4472の周囲の球状星団系の年齢を評価し、それらが120-180億年前に、しかも20-30億年の間に誕生したことを明らかにした。これは楕円銀河本体もその時期に形成されたことを強く示唆する(論文1)。(2)世界中の楕円銀河のスペクトル進化モデルを取りまとめ、その整合性を吟味して公にした。その中で、銀河のスペクトルエネルギー分布には年齢と金属量の情報が縮退して入っており、いずれのモデルもその分離に成功していないことを明らかにした(論文2)。(3)28個の渦状銀河のバルジのスペクトルを観測し、バルジの金属量指数と速度分散の関係を初めて導出した。楕円銀河の類似の関係と比較したところ両者は全く同一であることが判明した。これはバルジの形成過程が楕円銀河のそれと同一であることを強く示唆する(Jablonka,Martin,Arimoto 1996,AJに投稿中)。(4)楕円銀河の銀河風モデルをもとに紫外域から近赤外域までのスペクトルエネルギー分布の進化を計算し、高赤方偏移にある電波楕円銀河のそれが赤方偏移2よりも遠方の場合は銀河風発生以前のモデルと、逆に近傍の場合は銀河風発生以後のモデルと非常によく一致することを示した。これは楕円銀河の起源として銀河風説を強く示唆する(Yoshii,Arimoto,Taniguchi,Renzini,1996,ApJに投稿中)。(5)楕円銀河の形成期を直接捉える可能性のあるのはCO分子の輝線観測でする。銀河風モデルでCO輝線強度を計算するための準備として、一連の分子雲の観測の考察をまとめた(論文3,4,5)。(6)ダストによる光りの吸収と散乱が銀河のスペクトル進化に及ぼす影響を計算し、銀河の係数観測においてはそれがあたかも銀河が進化しないかのような振る舞いをもたらすことを示した(vansevicius,Arimoto,Kodaira 1996,ApJに投稿中)。(7)矮小楕円銀河の惑星状星雲の化学組成を推測するモデルを化学進化に基づいて構築し、惑星状星雲の化学組成は矮小楕円銀河が矮小不規則銀河から進化したものではないことを明らかにした(Richer.McCall,Arimoto 1996,AAに投稿中)。
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