本研究では、楕円銀河の形成と進化を、銀河本体の星の種族と高温ガスの特質の理解、並びに銀河を取り巻く球状星団系の起源を考察して解明した。1 まず、ガスと星の系である銀河の化学進化とスペクトル進化を任意の星の生成史に対して整合的に追跡できるモデルを世界に先駆けて構築し完成した。2 これを用いて楕円銀河の球状星団系の光度関数と色分布の観測データを解析し、球状星団系が120-180億年前に20-30億年の期間中に形成されたという証拠を得た。3 また、電波楕円銀河のエネルギー分析を調べ、赤方偏移が2以上の銀河は星形成の兆候を有するのに対し、それより近傍の銀河にはそれがない事を突き止めた。4 渦状銀河のバルジのスペクトル観測を行ない、金属線の吸収線強度とバルジの光度との相関が楕円銀河のそれと全く同一であることを発見した。これらの結果2-4は楕円銀河およびバルジが宇宙の進化の初期に原始銀河が大規模な星形成を起こして形成された事を強く示唆する。5 楕円銀河の高温ガスの鉄組成は少なくとも銀河の星の平均の鉄組成と同じかそれよりも高いはずである。にも拘らず、X線衛星「あすか」で測定しところその値は星の平均値の半分以下である。この原因を天体物理学的に考察し、鉄のL輝線の原子物理量が不正確であることを明らかにした。6 銀河団ガスの化学組成を評価し直し、これが楕円銀河の銀河風モデルによって再現される事を示した。5-6は2-4の結果を化学進化の観点から支持するものである。今後の研究の発展は星の大規模に生成している宇宙論的距離にある楕円銀河を発見することである。それにはCO輝線が有効である。CO輝線光度の進化をモデル化するために、7 まず 渦状銀河でのCO分子ガスとHIガスの分布が相転移的である事を発見し、8 次にCO輝線光度を水素分子ガスの質量に変換する係数が金属量に逆比例する事を発見した。今後この知見に基づいて、星形成期の楕円銀河のモデルを構築し、観測の可能性を探る予定である。
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