本研究の主要課題は、中小質量(1-5太陽質量)星の進化の最終段階である漸近分枝(AGB)星から惑星状星雲(PN)への進化において、星をとりまく星周塵の構造と進化の関連を調べることを通して、星の終末進化段階を観測的に明らかにすることにある。これまでに観測を行ってきたAGB星に対して、赤外線波長域でのエネルギースペクトルの性質とAGB星の我々の銀河内での分布との関連を調べながら、より詳しい赤外スペクトル観測を行うべきAGB星の選定を試みた。その結果、星周りの星周塵の量(厚さ)の特に多いAGB星(質量放出の激しい星)は、銀河内での空間分布が他のAGB星と大きく異なっていることがわかってきた。このことは、星周塵の形態の違いが、AGB星の進化段階の時間的な違いのみではなく、星自身の質量等の初期条件に大きく影響されている可能性の高いことを示唆している。従って、星周塵の形態の違いを時間による変化とだけ考えて、赤外線スペクトルの変化を追求するだけでは十分でないことが分かってきた。いろいろな形態の星周塵を伴ったAGB星の銀河内での空間分布を形態毎に調べることもあわせて重要な問題であることが分かった。空間分布の決定には、天体の放射する全輻射エネルギーを用いて推定する方法があり、この方法を行うために約40個のAGB星の赤外線測光観測を行った。本課題は次年度にもわたる断続課題なので、本年度に得た観測データも加えた解析によって、星自身の初期条件の違いと進化段階の違いによる効果を分けた議論を進めることによって星の終末進化を明かにできるよう観測計画を進める事が重要になってきた。
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