本研究の主要課題は、中小質量(1-5太陽質量)星の進化の最終段階である漸近分枝(AGB)星から惑星状星雲(PN)への進化において、星をとりまく星周塵の構造と星の進化との関連を調べることを通して、星の終末進化段階を観測的に明らかにすることにある。計画段階では、星の最終段階の進化の時期と、個々の星をとりまく星周塵の空間構造の変化との関連が重要であると考えて、この関連を明らかにする観測を目指していた。観測対象天体を選定するための準備観測を平成6年度に進め、そのデータを解析し考察を進めた結果、特に多量の星周塵にとりまかれたAGB星(質量放出の激しい星)の銀河内での空間分布と、AGB星の中でも炭素星とよばれる一群の星とは大きく異なっているらしいことがわかってきた。このことは、AGB星の終末進化と我々の銀河内でのAGB星の空間分布に何らかの関係のある可能性を示している。つまり、銀河内での場所のちがいから生ずる環境のちがいによって、星の終末進化に差が生じる可能性を予想させる。我々は、この点の重要性を新たに考察して、AGB星の空間分布を明らかにするための観測を併せて進めた。AGB進化段階にあると考えられる炭素星約1000個を観測対象として選び出した。それらの内の約450個に対し、平成7年10月に、測光観測を行ない近赤外エネルギースペクトルを得た。これらの観測結果と、IRAS衛星によって観測されたAGB星の測光データを用いて、AGB星の空間分布と星の進化の関連を調べた。星の最終段階の進化は銀河内の場所によるちがいがあり、銀河中心からの距離に依存した効果のある事を強く示唆する結果を得た。
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