研究概要 |
平成6年度の本科学研究費で購入したワークステーション,S4/5,モデル70を使用して,本年度(7年)は,周期彗星の長期的軌道進化の計算を本格的に行なった.周期1000年以下の既知彗星228個の軌道を,彗星の物理寿命を考慮して過去と未来に3万年ずつ数値積分し,状態ベクトルと惑星への接近の情報を0.5年おきに出力した.この結果を,統計的手法などによって種々に解析した.計算の主要部分は,研究代表者が指導した,日本大学理工学部,修士大学院生,倉橋肇に負うところが多い. 本研究の主な目的は,彗星起源の小天体と惑星(特に木星と地球)の衝突頻度を計算し,惑星や衛星上のクレータ統計と比較することである.1991年に行なった同種の研究に比べ,サンプル数が1.5倍,積分期間が15倍になったため,海王星以外のすべての惑星について,接近の頻度から統計的に衝突の頻度を外挿するのに充分な接近データが得られた(木星:IAU以下の接近は65000回,地球:0.15AU以下の接近は3700回).衝突確率を求める計算を現在実行中である. また,木星と主に相互作用しているが,遠方の軌道にあるため地上からは観測できない短周期彗星の総数を,我々の計算結果から推定し,既知彗星数の40倍以上あることを示した.その外,小惑星ほど安定ではないが,小惑星以上に多様性に富んだ木星との共鳴状態が約10%の彗星について実際に起こっていることを見つけた. 今後,さらに解析を進め,ボイジャー探査機による木星と土星の衛星上のクレータ統計と比較し,地球に将来衝突する可能性のある彗星起源小天体のフラックスを求める予定である.
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