研究概要 |
1.多自由度系における量子トンネル効果:量子トンネル崩壊に対する比較的遅い環境の影響について調べた。先ず、瞬間的トネンル効果に対する、いわゆる、零点振動の公式の一般的な導出を行い、ついで、摂動論に基づいて環境体のもつ有限の励起エネルギーの効果を、散逸因子の形で表現した。それらの一般的な公式を、調和振動子との線形結合、および、回転運動との結合の問題に適用し、環境体の持つ有限の励起エネルギーは、瞬間トンネル効果の極限で評価されたトンネル効果の確率を減少させる事を示した。又、得られた定式化を用いてクーロン障壁以下での重イオン核融合反応の解析を行い、散逸因子で補正した瞬間トンネル効果の概念が、現実の重イオン反応の記述にあたって有効である事を明らかにした。 2.重イオン核融合反応におけるボンド(分子軌道)形成効果:我々が最近開発した動的規格化因子法を用いて重イオン核融合反応における分子軌道形成の効果を分析し、典型的な暈原子核である^<11>Liと^9Liの核融合では、その効果は小さい事を示し、^<11>Be+^<10>Be反応など、芯外核子の密度に関する偏極効果が期待される系では、分子軌道形成による核融合断面積への大きな効果が期待できる事を論じた。 3.不安定原子核の励起関数の構造:暈原子核のソフト多重極励起の崩壊をポテンシャル共鳴と比較して分析し、ソフト励起は、粒子崩壊敷居値のすぐ上に鋭いピークを示すが、崩壊率は共鳴で期待されるものより遙かに速い事、その結果、半値幅は、不確定原理から予測されるものより数桁小さくなる事を示した。又、ソフト励起の大きな遷移強度は、巨大共鳴のように集団的な粒子一空孔状態によってではなく、非共鳴的な一粒子励起によって与えられる明らかにした。 4.相対性理論を用いてPt,Hg,Pbの構造を計算し、形などの構造がアイソトープチェインにそってどのように変化するかを調べた。
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