1.アルゴリズムの開発 素粒子の強い相互作用を記述する量子色力学(QCD)における基本粒子はクオークとグルオンである。このグル-オンの有限温度における振る舞いを数値シミュレーションによって調べることが本研究の目的である。グル-オンの伝播関数はゲージに依存するため、測定のためにはゲージ固定という操作が必要になる。しかし、QCDのようないわゆる非可換ゲージ理論においては、このゲージが一意的に固定できないことがグリボフによって指摘されている。そこで、まず自由光子の存在が知られているU(1)理論において、正しい伝播関数を与え、数値シミュレーションも可能であるようなアルゴリズムの検討を行なった。その結果、確率ゲージ固定法が信頼できる結果を与えることが明らかになり、QCDの数値計算のための離散化アルゴリズムを構築した。 2.プログラムの開発 グル-オンの性質を調べるためには、近距離から遠距離までの振る舞いを調査しなければならない。そのためには、格子間隔は小さく、格子のサイズは大きなものでなければ良質のデータを得ることは難しい。この目的のため48×48×48×64というこれまでに計算されたもっとも巨大な格子上で計算が必要となる。このシミュレーションを並列ベクトル型という新しいタイプのスーパーコンピュータである航空宇宙技術研究所の開発した世界最高速の計算機「数値風洞」の上で行なうべく準備を進めている。現在プログラムの開発がほぼ終了し、テストランを行なっている。
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