昨年度に、現有ワークステーションの増強をおこない、実験データと直接比較できる観測条件を込みにした空気シャワーのシミュレーションによって、データー解析の方法を検討した。 今年度は、データ解析方法のつめを行い、蓄積したデータの解析を行った。1)地上高度での同種の観測では、空気シャワーの頻度が組成比に強く依存し、また空気シャワーの発達の変動が大きいため、空気シャワー・サイズから10^<15>eV領域の一次宇宙線の全強度スペクトルを求めることが原理的に不可能であること、2)羊八井高度では、天頂角約25度以下という制限内で、^*10^<14>-〜10^<17>eV領域の一次宇宙線がつくる空気シャワーのサイズが組成によらずほぼ等しく、エネルギーのみによって決まること、およびその発達の変動が小さく、一次宇宙線のエネルギーがほぼ20%の誤差で決定できることなどを明らかにし、200万イベントの解析を終了して、3×10^<14>eVから2×10^<16>eVまでの一次宇宙線全粒子微分強度j(E_0)について以下の結果を得た。 j(E_0)=1.5×10^<-20>(E_0/10^<14.75>eV)^<-2.60±0.04>(m^<-2>sec^<-1>sr^<-1>eV^<-1>)at E_0<10^<14.75>eV j(E_0)=1.2×10^<-23>(E_0/10^<15.85>eV)^<-3.00±0.05>(m^<-2>sec^<-1>sr^<-1>eV^<-1>)at E_0>10^<15.85>eV なお、スペクトルはこの間で徐々に変化しており、j(E_0)=6.7×10^<-22>(m^<-2>sec^<-1>sr^<-1>eV^<-1>)at E_0=10^<15.25>eVである。これまで地上観測等で得られていた3×10^<15>eV付近での急激な折れ曲がりは観測バイアスが原因である。得られたスペクトルは100TeVまでの直接観測結果のなめらかな延長上にある。
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