藤川は、まずCornell大学のCLEOグループの実験結果に基づいてクオークの弱い相互作用の左手系の結合からのずれを分析した。ついで、この結果を取り入れたしかもより重いクオークとかレプトンを含むいわゆる標準模型を越える理論の可能性を考察した。ここで、基本的なメカニズムとして、ある種の指数(analytic index)を持つ質量行列を用いた。この指数を持つ質量行列は高次の量子補正に対して安定なカイラルなクオークとかレプトンを作り出し、クオークとかレプトンのフレーバーを変える弱い相互作用の高次の効果を小さく抑えることが出来る。このような模型は、より重いクオークやレプトンがあるいは実在するかも知れないことを示唆する。藤川は、またカイラルなゲージ理論に対する一般化されたPauli-Villars正則化の基本的な機構を解明し過去に知られていた共変的な正則化との関連を明らかにした。特にフェルミオン数を破る量子異常がどうして一般化されたPauli-Villars正則化で得られるを説明した。 久保は、二次元重力理論におけるワイル対称性の役割をブラックホールの安定性および量子重力理論の観点から考察した。特に二次元ブラックホールの安定性を示唆したことは新しい結果である。更に、ゲージ場の量子論の一般的な考察と関係してBRST電荷が満たす代数関係の詳細な考察を行なった。現実の物理との関係したテーマとしては、超対称統一模型に久保達が以前から提案してきた結合常数還元原理を適用してゲージ結合と湯川結合の統一の可能性を考察し、ボトムとトップクオークの質量が正しく予測されることを示した。
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