入射核破砕反応で生成する不安定核の磁気モーメントを測定するために、次の4段階からなる新しい核スピン偏極法の開発を行なった。1.光ポンピングによるRb原子の偏極。2.Rb原子とのスピン交換衝突を通じたXe気体の核スピンの偏極。3.偏極を保持したXe固体の生成。4.この固体にインプラントした不安定核へのXe核からの偏極移行とβ-NMR測定。その結果、次のような成果が得られた。 1.気体Xeの偏極に成功し、圧力p=10torrで偏極度P_<Xe>=60%が得られた。圧力pの増加とともにP_<Xe>は減少することが明らかになった。p依存性を600torrまでの領域で検討し、測定結果が光ポンピングとRb-Xe、Xe-Xe衝突過程及び容器壁における緩和を考慮した時間発展方程式に基づく理論的予測とよく一致することがわかった。 2.壁緩和を軽減するために、容器内壁のコーティングを種々の素材を用いて試行し、壁緩和時間11min.という著しい改善を得た。これにより、不安定核をインプラントするのに必要な10^<21>個の^<129>Xeに対してP_<Xe>=7.5〜11%を実現する見通しが得られた。 3.偏極Xe気体から、固定Xeを生成し、(1)光ポンピング装置からクライオスタットへの移送、および(2)冷却による凝縮・固化過程、におけるスピン偏極保持が可能なことが明らかになった。 4.本偏極法適用のために基礎として、入射核破砕反応生成核のβ-NMR測定法の開発を行なった。反応自身によって偏極の得られるいくつかの核種について核モーメントを測定し、結果を得た。 現在、これらの成果を応用して^<11>Beの磁気モーメンチを測定するための準備を行なっている。
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