研究概要 |
多クラスターないし多核子系の変分計算において、重要な基底を確率論的に選択することは有力であることを前年度に示した。今年度はこの結果をふまえて、Li、Beアイソトープを中心に確率論的変分法を適用し、これらの原子核における核子ダイナミクスを明らかにすることを目指した。 α、t、h、n、pなどのクラスターを含む3〜4体系として、^<8,9>Li、^8B、^9C、^<9,10>Be、^9Bの原子核の分析を行った。^9Li、^9Cの磁気能率、電気四重極能率の理論的値は新たに測定された実験値とよい一致を示した。また、^9Beのα+α+n模型による計算は、^9Li→^9Beのベータ崩壊を除いて、多くのデータを包括的に再現しうることを示すことが出来た。さらに^9Li→^9Beのベータ崩壊は、αがt+p、h+nへくずれる成分を僅かにいれてやることにより理解出来ることがわかった。複素回転法を用いた^9Bのα+α+p模型計算によって、共鳴状態のスピン・パリティーを予言したが、今後実験的に確認されることが望まれる。α+α+n+nの4体模型による^<10>Beの計算では、殻模型型には多粒子励起を含むとされる励起0^+状態が基底状態とともに再現されることが示された。 ハートリー・フォック模型によるBeアイソトープの計算はクラスターの存在を仮定しないという利点があるが、平均場を越えた粒子相関を十分に考慮できないという限界がある。その計算結果は大まかな特徴を説明出来るが、パリティーや角運動量の射影などがどのように影響するか検討すべき課題である。
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