マルチアノード光電子増倍管から出力される複数のアナログ信号を同時に取り込みデジタル化処理を行いコンピュータに取り込む一連の装置の構築を行った。アナログ信号のデジタル変換装置とコンピュータへのインターフェース部分は、CANACとGPIBバスと呼ばれる比較的標準化の進んだ規格を採用し、それぞれをコントロールするプログラムを作成した。これらを用いてマルチアノード光電子増倍管からの一回一回それぞれの信号(時間間隔にして数ナノ秒で複数チャンネル)をパーソナルコンピュータへ取り込むプログラムをCで書く事により達成した。 この装置を用いて、テスト用光電子増倍管の性能試験を実行した。光電子増倍管の増幅率の安定性や直線性等の基礎的データの採取のために複数の光源をマルチアノード光電子増倍管の置かれた暗箱中に持ち込む必要があった。しかしこのことは、本研究の本来の目的である、位置分解能の試験と両立させるためにかえって多くの解決すべき問題を作りだしてしまい、この問題の解決に多くの労力と時間を費やした。最終的に本研究に使用するマルチアノード光電子増倍管の基本性能である安定性や直線性等については何かと信頼にたるものであることが実験により確かめられた。 測定結果と一致する基本的性能を表す光電子増倍管の計算機上での実現(シミョレーション)を行なう予定であったが、予想に反して直線性のテスト装置の構築に時間をとられシミョレーションソフトの完成には至っていない。 また薄く広い(光電面程度)シンチレータを光電面に直接のせて光電面の任意の場所を通過する荷電粒子により発生するシンチレーション光の位置測定精度の研究を行なう予定であったが、光源位置の移動を暗箱中で伴う実験のため種々の余分な装置の構築が必要になり現在これらの装置の構築中である。
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