場の量子論の位相幾何学的側面を二つの方向から研究した。一つは高次元空間に埋め込まれた曲がった空間上の量子力学を展開し、その空間上に出現するゲージ構造(一般に非アーベル的な)の研究である。今一つは、場の理論の位相的非自明解であるカイラルソリトンの研究である。 多様体上の量子力学に関しては、1次元ながら任意の曲がった空間、即ち任意の閉曲線上の量子力学を展開した。また、議論を2n次元球面にまで一般化して、そのゲージ構造が、非アーベル的ゲージ場理論の自己双対解であるところのモノポール解やインスタントン解であることを示した。これは、有限次元の量子力学から無限次元の場の理論へ議論を拡張することによって、ゲージ場の起源を追求するための手がかりになる。 (3+1)次元時空におけるカイラルソリトンの研究では、QCDにおける(1/N)展開によるバリオンの性質に関していくつかの面白い結果を得た。その一つは N=無限大におけるカイラルソリトンの描像がどのようにしてN=3のモデルにつながっているかのを調べるため F/D のN一依存性を計算したことである。これにより(3+1)次元時空のカイラルソリトンとしてのバリオンについて、その描像がかなりはっきりしてきた。次の目標は(1/N)の高次の展開である。それによって有限のNにおけるバリオンがどのような群で記述されているかが分かるはずである。
|