研究課題/領域番号 |
06640388
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
玉垣 良三 京都大学, 理学部, 教授 (30027338)
|
研究分担者 |
高塚 龍之 岩手大学, 人文社会学部, 教授 (50043427)
巽 敏隆 京都大学, 理学部, 助手 (40155099)
|
キーワード | 中性子星 / 超流動 / Π中間子凝縮 / K中間子凝縮 / 冷部 / アキシオン / 状態方程式 / 超新星 |
研究概要 |
中性子星の芯領域にある高密度核物質では、中間子の自由度が核子超流動、中間子凝縮等のハドロン凝縮相を顕在化させ、中性子星の現象に顕著な効果をもたらす。中性子星の熱的進化の過程はこれらハドロン凝縮相の性質に強く関係する。このような視点から、今年度の研究は次の問題に集中して行われた。 1.荷電π中間子凝縮は中性子星の冷却を加速し標準シナリオでは説明出来ない低い表面温度を与えるが、それのみでは中性子星の冷却曲線は観測値よりはるかに低くなり、最新の観測結果との矛盾をきたす。この難点を救うのは準中性子の^3P_2超流動である。この二つのハドロン凝縮相の効果をとりいれた計算により、中性子星の質量等の構造的要素に微細調整を持ち込むことなく、冷却の全体的様相を説明した。 2.中性子星の芯領域にK中間子凝縮が顕在化した場合を記述する理論的枠組みをカレント代数とPCACに基づき構成した。それを用いた計算で、K^-凝縮の成長にともない陽子成分が急増することを示した。この状況では直接URCA過程が起こる可能性が予測された。しかし検討の結果、電子の化学ポテンシャルの急減のため、直接URCA過程は適当な対称エネルギーの密度依存性がある場合にのみに限られることを明らかにした。 3.π中間子凝縮相をもつ中性子星において、アキシオンの放出による冷却の問題をしらべた。中性π中間子凝縮はアキシオン放出を急増させ、その温度の4乗依存性は老年期段階で光子放出による冷却と競合しうることを示した。 4.誕生期の中性子星では、陽子の混在度がかなり高く、高温で、中性微子がトラップされている超新星物質となっている。このような高温で非対称度の大きい核物質を現実的に扱い得る理論的枠組みを始めて構成し、数値計算によりその物質組成、状態方程式を与え、極低温中性子星のそれと著しく異なる特徴があることを示した。これにより中性子星の熱的進化を扱う上で有力な足場がつくられた。 5.上記の超新星物質の性質に基づき、中性子星は誕生期には太っていて内部に行くほど高温の温度分布をもち、極低温の中性子星に冷えると半径は収縮することを示した。そのことから、初期の中性子星の質量と回転角速度の上限に新しい値を与えた。
|