大立体角を覆う複合検出器群を構成する検出器として、ブラッグカーブ検出器(BCC)と呼ばれている特殊な電離箱の新しい形状のものの開発を進めた。1つのガス容器に4つの独立したBCCを詰め込んだSector型BCC(S-BCC)と8角錐形をその基本形とした多重度測定専用の大立体角Multiplicity BCC(M-BCC)をそれぞれ1台ずつ試作し、12Gev陽子、20Gevαビームによるに標的核破砕反応からの中間質量を持つ破砕片(IMF)に対する応答を調べた。その結果、通常のシンチレーターが使えないぐらい数多くの、ビームハロ-から来ると思われる最小電離信号を出すような2次粒子が存在するKEK-PSの一次ビームラインででも、運動エネルギーが1.5-3.5MeV/nucleonで荷電が6以上25以下のIMFについて、ほぼ期待通りにエネルギー及び粒子識別の情報を与えてくれることが分かった。この経験に基づき、検出器間の不感領域をより小さくし、既存の散乱槽の中に全部で37台の独立したBCCを組み込むことにより全立体角の20%近くを覆えるような検出器系を設計しつつあり、来年度には本実験を行う予定である。これと平行して、現状より更に低エネルギーの荷電粒子まで粒子識別出来るように、これまでと逆方向に電場をかける形式のBCCも現在開発中である。実際の実験では数多くのブラッグカーブ検出器を同時に使用することになるので、検出器内のガス圧を一定に保ったままガスを循環させるために必要な安価なガスハンドリングシステムの開発もおこなった。今回開発したシステムは小さなアタッシュケースにはいるぐらいの大きさにすることが出来たので、検出器の種々の荷電粒子に対する応答を調べるテスト実験のために他大学や研究所の加速器施設を利用する際に簡単に持ち運ぶことが出来るようになった。
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