当該研究計画では、数学と物理学の交流を通じて発展した可積分系につき、とくに超対称可積分理論の構造とその超空間での摂動論に焦点を当て研究を遂行した。前者について本年度は従来調べたN=2の場合の結果に基づきN=4の超対称性を有するサイン・ゴルドン理論を以前に我々が開発したN=4カイラル超空間の方法で解析した。特に、超対称場を用いてその方程式を書き下し、古典論レベルで保存則と量子論での保存電荷を摂動論で調べた。このカテゴリーのソリトン理論の根底に存在する対称性はN=2サイン・ゴルドン理論の場合、量子アファイン代数s1_q(2)とN=2超対称代数で、超対称なトポロジカル・チャージが超対称ソリトン構造およびS-行列を決定する上で非常に重要な役割を演じているのが明らかになった。さて一方、超対称な量子群を実現する方法として量子平面(空間)の超対称化を行いこの空間での非可換微分算法を調べた。さらに、場の理論における正準変換の超対称性シグマ模型への拡張について基研に滞在中のザコス博士と研究・討論を行った。一方、強い相互作用における摂動論的QCDに基づき、核子スピン構造関数の解析を行った(Phys.Lett.B343(1995)346;B344(1995)348;B345(1995)527)。口頭では10月に山形大学で開かれた物理学会で発表した。また10月の基研における国際研究集会“From Hadronic Matter to Quark Matter"で講演を行った。本計画の実施において、国内各地の関連する分野の研究者との討論・研究交流が有益・不可欠であった。尚、予算執行としては旅費の他、論文作成に必要なノート型パソコンおよびその周辺装置を購入した。
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