当該研究計画では、物理学と数学の交流を通じて発展した可積分系につき、とくに超対称可積分論の構造とその超空間での摂動論に焦点を当て研究を遂行した。前者について本年度は、場の理論の双対性の問題に関して、米アルゴンヌ国立研究所のコスマス・ザコス博士との共同研究で超対称シグマ模型の双対性について、その超空間での定式化および双対シグマ模型の幾何学を調べ、論文として発表した(Nucl.Phys.B469(1996)488-512)。さらに、N=2超対称シグマ模型への拡張を検討を開始し、CP(n-1)模型についてその双対変換を調べた。一方、超対称な量子群を実現する方法として超対称量子平面での非可換微分算法に関しても分析を行った。また、東大グループとの議論をもとに、N=4の超対称性をもつサイン・ゴルドン理論についての研究を行った。一方最近、高エネルギーQCDと、これら可積分系との関連に大きな関心が持たれ始めている。本年度は、摂動QCDに基づき、核子のスピン構造関数に登場する高次ツイスト演算子のくりこみの解析を、広島大学のグループと共同で調べた(Pyhs.Lett.B387(1996)855-860)。口頭では10月に佐賀大学で開かれた物理学会で発表した。また、光子構造関数のsmall xでの振る舞いについて、1996年11月に東大原子核研究所における国際研究集会"Physics in e-p collisions"で招待講演を行った。本計画の実施において、国内各地とりわけ、東大・広大・横浜国大・徳島大の関連する分野の研究者との討論・研究交流が有益・不可欠であった。尚、予算執行としては旅費の他、論文作成に必要なパソコンの増設メモリやソフトを購入した。
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