一般相対性理論における動力の理論を量子力学的な「重力の量子論」又は「量子重力理論」に構成することは現代理論物理学の主要課題の一つである。 二宮は、川合光(高エネルギー研・授業)及び北沢良久(東工大・理・助教授)と共に本研究計画において過去数年の間、くりこみ群とε展開に基づく統計力学的な場の理論の方法を応用して量子重力理論を構成する研究を行い、国内及び海外において注目されるいくつかの結果を得てきた。私の研究の特色はアインシュタインの重力理論がくりこみ可能となる2次元時空の近くの2+ε次元においてくりこみ群を用いて統計力学的場の理論によって研究し、得られた結果を現実の4次元時空に拡張する、というものである。 平成8年度には主として2つの方向において研究を大きく進展させることができた。第一の進展は、前年度までに得られた2+ε次元の時空における重力の理論が、場の量子論として矛盾のないものであること、つまり、くりこみ可能であることを厳密に証明できたことである。これによって、我々が提案した微小距離あるいは高エネルギーにおける量子重力理論を応用して、時空の量子論的な性質を分析することが可能となった。第2の進展として、北沢良久と共同でこの我々の量子重力理論を用いて、宇宙誕生の瞬間のビッグバン特異点近くの時空の性質を詳細に分析することにより、短距離に長さが変化すると時空は自己相似的であるというスケール則が成立することを見出した。以上の成果を足掛かりに、これから本格的に現実の4次元の量子重力を構成する研究に進む予定である。 福間は格子重力としてのマトリックスモデルにおいて非摂動的な力学変数はフェルミオンであり、それが実際ソリトン的を解をあらわしていることを示した。又、このフェルミオン変数を用いて非摂動的効果を見出し、注目すべき知見を得た。
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