本件は、素粒子物理の基本法則を支配しているゲージ対称性の起源を問う目的で始められた研究で、本年(平成7年)度はその第2年目に当たる。昨年度は6次元時空において重力とU(1)ゲージ場の相互作用を持つ理論が、Kaluza-Klein機構によって4次元時空と2次元のRiemann面(Genus=g)にコンパクト化された場合4次元空間にはKaluza-Klein機構によるゲージ対称性のほかに、Berry位相機構によりさらに余分のゲージ場とゲージ対称性が発生すること、そしてその余分のゲージ場が力学的運動エネルギー項を生成する機構の解明を行った。 本年(7年度)は、その理論をより一般化する目的で、(1)運動エネルギー項を生み出す幾何学的理由の追求と、(2)コンパクト化する空間のGenusを大きくとることの可能性を追求した。(1)については、位相的に非自明な空間上における波動関数の一意性に関連して、いくつかの問題点を検討した。一般に、単連結でない空間は、幾つかの単連結なパッチを用いておおうことができ、波動関数は各パッチ毎に定義される。各パッチの接続区域では二つのパッチ上の波動関数はゲージ変換で結ばれている。この接続法を許すと一般に4次元時空にダイナミカルなゲージ場が誘発されることがわかった。(2)については、数学上の問題として解明された部分が多く、その物理的概念と非アーベルゲージ場との対応関係を検討している。 尚この研究に関連して、宇宙の構造を含めすべての対称性が統一される模型の一つとして、通常知られている弦理論を2次元宇宙を記述する理論と解釈し直すと、たいへん興味深い2次元時空の安定な宇宙模型になっていることを発見し、その研究に取り掛かった。
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