研究概要 |
1.Q^2発展方程式Altarelli-ParisiのQ^2発展方程式を速くかつ正確に解くことができるコンピュータープログラムを検討した。Laguerre多項式を用いた方法を研究し、α_3高次項の補正を入れたAltarelli-Parisi方程式の数値解を求めるプログラムを作製し、約20項のLaguerre展開で十分な精度の結果を得ることに成功した。またbrute-forceの方法によるプログラムも開発した。brute-force法はxとQ^2を小さく分割して積分と微分を行う方法であるが、xを2000分割しQ^2を200分割すれば2%以上の精度で数値解が求まることが判明した。種々の実験結果と比較することにより、小さいQ^2領域でパートン再結合あるいは高次ツイストの効果が顕著となることを示した。スピンに依存するQ^2発展方程式を検討した結果F_1とg_1構造関数のQ^2発展が小さいQ^2でかなり異なることが示され、実験解析をする際にg_1/F_1の比がQ^2に依存せず一定と仮定できないことが判明した。この発展プログラムを使用して最適偏極パートン分布を求める研究を進めた。 2.原子核内のパートン分布[(u-d)_A,F^<A(>_3(x)]原子核内で異なる核子に属するパートンの相互作用を考慮することにより原子核内でのu(x)-d(x)を計算した結果、核子内でu=dであっても原子核媒質の効果により原子核内で有限なu-d分布が得られることが判明した。従って、原子核を標的としたDrell-Yan実験をしu(x)-d(x)を求めGottfried総和則との対応を研究する場合慎重な検討が必要である。次に構造関数F_3における原子核の効果を解析した。この研究では2つの異なった理論による模型(parton-recombination型模型とaligned-jet模型)を検討した。その結果、2つの模型は小さいx領域で非常に異なった振る舞いをすることが判明した。従って、小さいx領域でのF_3を研究することによりどちらの模型の方がより的確に影散乱のメカニズムを記述しているのか判定できる。 3.核子内のフレーバー分布u-dNMCによってGottfried総和則の破れが指摘され、この現象に関連してuとdの分布が異なることが最近かなり研究されてきた。これらの理論および実験の研究を総括した論文を書き Physics Reports に提出した。
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