研究課題
一般研究(C)
今年度は、電子-陽子散乱過程に寄与する素過程を系統的に調べる予定であったが、これを行うために最も必要であった超対称粒子の関与する反応過程の散乱振幅を自動的に生成することができるようになった。 ここで問題になったのは、標準理論には現れてこなかったマヨラナ粒子の取り扱いである。マヨラナ粒子は粒子と反粒子の区別の無いフェルミ粒子であるので、通常のディラック粒子と同様の方法で自動生成を行うと、同一の中間状態を多数生成してしまうことになる。 これは散乱断面積の計算を行うときに計算効率を著しく悪化させる原因となる。 これを回避するためには自動生成の際に同一の中間状態を生成せずに、全て異なった状態のみを生成するアルゴリズムを作る必要がある。 そこで、マヨラナ粒子に対してディラック粒子の場合とは異なったファインマン規則を設定することにより重複する状態を生成しない自動化のアルゴリズムを作った。 この方法を使うことによりマヨラナ粒子の関与する反応過程に対して効率の良い自動化を行うことが可能になった。 またこの方法で幾つかの反応過程に対する散乱振幅を自動的に生成し、得られた散乱断面積が数値的にも正しい答えを与えること事を確かめた。本研究でマヨラナ粒子の取り扱いが可能になったことにより、超対称性理論だけでなく、マヨラナ粒子が現れる他の理論の自動化の可能性も出てきたことになる。この成果は1994年度日本物理学会秋の分科会(山形大学)で発表を行った。また、電子-陽子散乱過程に於いて始状態にある陽子内のパートンに対する量子色力学(QCD)の効果を加えたシミュレーションを行うためのアルゴリズムの開発については来年度に本格的検討を開始する予定であるが、陽子内のクォークとグル-オンの縦運動量分布のスケーリング則の破れを、その分布関数の相対比まで正しく再現できるアルゴリズムの基本的な方法を見い出すことができた。 この方法は、これまで使われていたアルゴリズムに於ける計算手法の違いから来る数値的な任意性を排除することができ、QCDの高次項(Next-to-leading logarithmic terms)へ理論的に矛盾の無い形で拡張できる可能性を持っている。 この方法については更に数値的なチェック等が必要であるが、基本的な部分については論文としてまとめる作業に入っているところである。
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