本研究は、大型計算機で開発された宇宙線の大気中での伝播のコードCosmosをUNIX環境に移植し、コードの信頼性を高め、新しい物理過程を導入し、広く研究者の使用に供する事を目的とした。 カスケード現象のモンテカルロシミュレーションはベクトル計算機による高速化が困難な問題の一つで、これを専用並列計算機を用いることなく、通常のワークステーションを多数用いて分散処理し、実行効率をあげる事も課題とした。 Cosmosコードはカミオカンデで観測されている大気ニュートリノの異常現象等の低エネルギー現象をシミュレート出来るだけでなく、超高エネルギー領域のシミュレーションも可能である。そのため物理課程として、ランダウ・ポ-メランチューク効果、地磁気による制動放射と対生成の効果を新たに組み入れた。 幸いCosmosは多くの研究者に受け入れられ、日本以外にも、中国、アメリカ、カナダ、ブラジル、インド、ヨーロッパの数か国の研究者が使用している。また、適用領域は、上記の大気ニュートリノ現象、反陽子の観測、1次電子の観測、チベット等の高山での宇宙線観測(特に高エネルギーガンマ線観測)、チェレンコフ光の観測、Telescope Arrayによる宇宙線観測の予備研究、宇宙線のエネルギー限界での観測、など広範に渡っている。 Cosmosについては、WWWによる情報公開が http:〃cpsun4.b6.kanagawa-u.ac.jp/〜kasahara/ にて行われ、メーリングリストでの情報交換も行われている。
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