研究概要 |
(1)Ξ原子吸収反応における軽いΛ核及びΛΛ核の生成反応の典型例である^<12>C-Ξ系を取り上げ、この原子系から生成されるΛΛ核及びΛ核の生成率を直接反応描像に基づいて分析を行った。この結果、_<ΛΛ>^<12>B,_<ΛΛ>^2Be及び_<ΛΛ>^<11>Beの励起状態の生成率が1-2%程度で他のΛΛ核よりかなり大きくなることを明らかにした。さらに、文部省高エネルギー物理学研究所(KEK)でのE176実験で発見された_<ΛΛ>^<13>Bの生成過程と類似の過程である、(^<12>C、Ξ)_<atom>→_<ΛΛ>^<12>B^*+n→_<ΛΛ>^<11>B+n+n、_<ΛΛ>^<11>Be+p+n、が可能であることを初めて理論的に示した。また、複合ΛΛ核描像では数%の生成率を持つ_<ΛΛ>^6Heが、直接反応描像では0.2%程度で上記のΛΛ核の生成率と比べて一桁程度小さくなること、さらにdouble-Λ sticking probabilityは約5%程度となることなど、KEK-E176実験の結果とよい対応が得られたが、実験データの統計精度の問題などもあり、今後の高精度の実験結果が待たれる。 (2)(K^-,K^+)反応で生成されたΞ核状態経由のΛΛ核生成として注目されている^9Be(K^-,K^+)_Ξ^9He反応の励起関数を微視的クラスター模型を用いて分析した(これは米国BNLで実験予定である)。分析の結果、微分断面積の大きさは(π^+,K^+)反応と比べて約100分の1程度小さくなるが、Ξ粒子の結合エネルギー領域で一つの幅の広いピークが出現し、これは3つのΞ核状態が寄与していることが分かった。また、_Ξ^9He基底状態からのλλ^8Heの生成断面積を評価し、0.03-0.1nb程度で極めて小さくなることを示した。 (3)ハイパー核と深部空孔状態の研究から、軽い核の深部空孔状態(s-hole)の2体分解過程で戸口s-hole状態が有する空間対称性のために、α粒子より小さな粒子には分解できるが、α粒子およびα粒子より大きな粒子には分解が禁止されているという選択則が存在することを理論的に発見した。この選択則はごく最近大阪大学核物理研究センター(RCNP)での実験で検証された。深部空孔状態の研究とハイパー核の研究は密接な内的関係を有しており、この選択則がハイパー核の生成及び分解程度でどのような役割を果たしているかを明らかにすることはs-hole状態の構造及び分解の研究と共に重要な研究課題であり、現在進行中である。
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