トップクォークの質量が、WやZゲージボゾンと同じオーダーであることから、フェルミオン質量の問題は、世代間のそれと同時に世代内でのそれも加わった。本研究は、フェルミオンの質量の階層的構造が、超対称性理論、動的ヒッグス模型を踏まえて、漸近非自由な動的ゲージ理論の可能性、力と物質の統一理論を視野に入れて、究極理論を追及・検討することを目標とする。具体的には、フェルミオン質量の階層性の検討とそれに関連するゲージ対称性、およびくりこみ群などの非摂動論的手法で検討し、フェルミオンの質量の起源を追求した。大統一理論という点からは未だ多くの課題を残すものの、フェルミオンの質量の階層性の起源、ならびに動的ゲージ粒子の非摂動論的取扱い、これと関連するアノマリーの探究という面では新しい知見を得た。平成6、7、8年度の三年間の研究成果を以下に記す。 (1)フェルミオン質量の階層性の起源として、高次元相互作用項が統一エネルギースケールとプランクスケールの比の因子の可能性を検討した。(井沢健一・高橋智彦両氏との共同研究) (2)ニュートリノ質量と質量混合:中間スケールのある超対称性模型を再検討し、超対称性模型の可能な物質場の存在形態を検討した。(佐藤丈・高橋智彦氏との共同研究) (3)ベクター的な物質場を仮定(1TeV近辺)し、非漸近自由なゲージ理論でも、第3世代のボトムとタウの質量比を再現することを示した。(佐藤丈・大野木哲也・T.〜Takeuchi氏との共同研究) (4)動的ゲージ粒子と漸近非自由性との関係、nonlinear sigama模型を用いて示し、動的ゲージ理論は、Cut-off理論として記述されることを示した。(谷口祐介・谷村省吾氏との共同研究) (5)漸近非自由理論では、湯川結合定数とゲージ結合定数の比が、Infrared(IR)Fixed Pointをもち、低エネルギーの物理が予言できることを指摘した。(佐藤丈・吉岡紘一氏との共同研究)
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