研究概要 |
閉じた多様体上での量子化および量子論の問題は、これまで僅かにDirac による正準形式の拡張に基づく研究があるのみで、より基本的な研究は最近Landsman-Linden およびわれわれにより独立のアイデイアのもとに展開された。この種の量子化には、ゲージ構造が自動的に内包されているという注目すべき性質があることがこれらの研究で示され、特に、われわれはD次元球面上の量子化において誘発されるゲージ場の具体的な形を導いた。これに基づき、この際のゲージ場の数学的な性質をほぼ完全に解明することができた。結果は次の通りである。 [1]得られたゲージポテンシャルはそのときの次元Dをもつ球面上のYang-Mills方程式の解になっている。[2]D=1およびD=2n(n=1,2,・・・)ではゲージポテンシャルはトポロジカルに非自明になり、D=1ではAharonov-Bohm型ゲージポテンシャル、D=2は単磁極子のゲージポテンシャル、D=4はインスタントン解、またD=6,8,10,・・・ではFujii の一般化インスタントンとなる。とくにD=4Pのときは双対(反双対)関係が定義される。[3]D=2n+1(n=1,2,・・・)ではゲージポテンシャルはトポロジカルに自明になる。 興味のあることは、以上によってD次元球面上のYang-Mills方程式のトポロジカルに非自明な既知の解が本質的に尽くされていること、しかもそれが解析的な手法でなく表現論という代数的に導かれた点である。これがどの程度一般的なものなのか、数学的にも興味のあることらしいが、その隠れた意味は未解明である。 これと関連し、グラスマン多様体U(n+m)/U(n)×U(m)上の量子化の際に誘発されるゲージポテンシャルを導いた。これまでここでのYang-Mills方程式の解は、Donaldsonにより解析的な手法で特別なn,mにおいて求められているにすぎない。その点甚だ興味があるが、われわれの見いだした一般の場合の解は単純ではなくその数学的な性質の解明は目下進行中であるが、その全貌は遠からず発表の予定である。目下、他の多様体の検討も進めている。
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