本研究の目的は以下の通りであった。 ・シンチレーティング・ファイバーの試作品について、位置分解能、及び、光量と減衰長などの基本性能を調べ、ハイペロン核子散乱実験への適用を計ること ・シンチレーティング・ファイバー検出器から得られる、粒子の軌跡と輝度の符号化された画像情報に対し、パターン認識(自動軌跡認識と粒子識別)の技術を確立すること 幾つかの断面のシンチレーティング・ファイバーを用いて試作検出器を作成し、最小荷電損失程度の運動量を持った粒子(1.6GeV/c程度のπ粒子)、及び、ベータ線源や宇宙線により、 ○減衰長の測定 ○位置分解能の測定 ○二本の飛跡の分離能力、 等の基礎データを得る測定を行なった。さらに、このデータの解析を進め、実用化に向けた設計を行なった。試作器については、予想通りの十分な性能を得ることが出来た。 パターン認識(自動軌跡認識と粒子識別)に関しては、先入観のない多数の人間がその画像データを目で見て(視認し)分類する作業をさらに重点的に進めた。具体的には ○パターン認識のために開発制作したプログラムを用いて分類を行ない、人間により同じデータについて分類された結果と比較することにより、そのプログラムの認識効率を改良し、評価を行なった。 ○プログラムを、自動軌跡認識と粒子識別が可能な、汎用性の高いものに改良を進めた。 素粒子や原子核実験における散乱や反応の事象は、処理すべき数が、百万〜数千万になる。従って、このパターン認識により事象を計算機により選別する技術の確立は、シンチレーティング・ファイバー検出器の素粒子や原子核実験への応用を進めて行く際に、必須のものである。この技術を確立する過程で、パターン認識等に定量的な評価を行なうことができた。シンチレーティング・ファイバー検出器を使って画像としてデータを捕らえる方法は、本格的な実験に適用できる段階に達し、イメージデータの計算機による解析という手法も基本的には確立されたと考える。
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