(a)高分解能電子エネルギー損失分光器を用いて、銀単結晶(110)表面上[001]方向と[110]方向の表面プラズモンのエネルギー分散を測定した。電子散乱は、低エネルギー(〜10eV程度)では双極子散乱が主になり、高エネルギー(〜100eV程度)では衝突散乱が効いてくる。この散乱メカニズムの違いにより表面プラズモンのエネルギー分散に変化がないかを測定した。入射エネルギーは、15eVと60eVを用いた。その結果、[001]方向では入射エネルギーに依存しないが、[110]方向では60eVの方が大きな表面プラズモンのエネルギーが観測された。さらに重要なことは、測定値のばらつきが数十meVの範囲で起こることが確認された。そのために、表面プラズモンのエネルギー分散の決定は、不確定さを伴う。 (b)その不確定さの原因を探求するために、走査トンネル顕微鏡で表面の原子配列とステップの構造を観察した。その結果、原子配列を確認し、ステップ間の距離は場所によって異なり5nmから6nmのばらつきがあった。この結果は、表面プラズモンの運動量が0.002nm^<-1>より小さい場合に影響があることを示す。0〜0.04nm^<-1>の広い範囲のばらつきは、このスッテプによるものではないことを示す。 (c)ジェリウム模型を用た密度汎関数法の理論計算と比較を行った。d-電子の寄与により表面の誘起電荷は固体表面より内側にできると考えられるが、その位置はエネルギー分散の測定の不確定性から決定できない。
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